塗装の仕事を始めてから、私は長い間、下請け・孫請けとして数多くの現場に携わってきました。現場でハケを握り、黙々と作業を進める毎日の中で、「良い仕事をしたい」という気持ちは常にありました。しかし、その立場ゆえに、どうしても工事の単価が低く抑えられ、いただける金額が材料費ギリギリ──そんな案件も決して少なくありませんでした。
「この価格で、本当に納得できる仕事ができるのだろうか」
「お客様が期待している品質から遠ざかってしまうのではないか」
そう感じる瞬間が増えていくたびに、胸が締め付けられるような思いになりました。
お客様の大切な住まいに携わる以上、本来であれば細部にまでこだわりたい。
必要な工程にしっかり時間をかけ、妥協のない仕上がりを提供したい。
しかし、下請けという構造の中では、どうしても十分な時間や手間をかけられないことがありました。仕上がりに100%の自信を持てないまま現場を後にする日がある──それは私にとって、何より悔しく、申し訳ない気持ちでした。
そんな経験を繰り返すうちに、「この環境で仕事を続けていたら、いつか本当にやりたい“いい仕事”ができなくなるのではないか」と強く感じるようになりました。
塗装という仕事は、ただ色を塗るだけではありません。
住まいを守り、お客様に安心を届ける大切な仕事です。
だからこそ、その思いに正面から向き合い、責任を持って取り組める環境で仕事がしたい──その気持ちは日に日に大きくなりました。
そして私は決めました。
「自分が本当に良いと思える仕事を、お客様と直接向き合いながら提供したい」
「妥協のない品質を、胸を張ってお届けできる職人でありたい」
その想いこそが、私が職人直営店として独立を決意した一番の理由です。
今は、お客様から直接ご依頼をいただき、丁寧に話を伺い、納得のいく仕事を一つひとつ積み重ねています。
下請けの頃にはできなかった、本当の意味での“責任”と“誇り”を感じながら仕事に向き合えるようになりました。
これからも、「頼んで良かった」と心から言っていただけるよう、誠実に、まっすぐに、技術と向き合っていきます。
